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mokky14's IT diary

IT関係の仕事メモ、勉強会の感想など書いてます。

Agile Japan 2014 仙台サテライト に行ってきました(基調講演)

アジャイル 勉強会

2014/6/27(金)のAgile Japan 2014の仙台サテライトのレポート。

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当日のTogetter
本家のTogetter
仙台サテライトのTogetter

基調講演

日産でGT-R開発の総責任者を務めていた水野和敏さんによる基調講演。
この人のインタビューは日経ビジネスで何回か見たことがあって、そのインタビューの歯に衣着せぬ物言いが面白かったので楽しみにしてたけど、期待に違わない面白さでございました。
あまり"Agile Japan"の講演ではなかったけど。。

以下、内容と感想など。

企画も開発も生産も実験も販売もサービスも品質保証も一体になるのが日本人のすばらしさ。なぜこれが出来るかというと、大多数の日本人は共通の価値観を持ってるから。

日本語は、考えなければ、相手を洞察しなければ、喋れない言葉。
英語は何も考えなくても喋れる言葉。だから世界の公用語になった。言葉に感性のない国のブランドは失われている。グローバル競争が始まったら、アメリカはDiscount Valueの消費立国にしかならなかった。
ヨーロッパは単一民族国家、共通の価値観を持った集団がブランド形成している。
全ての会社がブランド形成に成功しているわけではない。アメリカの資本とマネジメントを取り入れた会社が、ドイツの文化や技術を理解せずにモノ作りを始めたら、Discount Valueの世界になってしまった。

最初から飛ばしてきたー。
日本ってアメリカに押されっぱなしで、仕事のやり方もアメリカに倣おうとしてるように感じるけど、自分たちの強みは知っておかないといけないんだろね。

レースは1年前に終っていなければいけない。サーキットに出てレースをやってるようではいけない。

自分がレースの仕事に入って、最初にやったことはビッグデータベース作り。
データ計測する人間を雇って、周りのライバル社の全ての車のデータを集める。そのデータを徹底的に分析し、来年勝つためにはタイムをどれくらい短くすれば勝てるか計算し、車の改良で何秒速くする、ドライバーが何秒速くする、メカニックがピットワークで何秒速くする、といった個々の目標を決め、裁量権を与える。
ここで与える目標は曖昧ではいけない。みんなが納得できるものでなければいけない。だからビッグデータを使う。
データは集めるだけではダメで思考しなければいけない。

この講演で衝撃受けたところ。
チームで目標を具体化して共有するのは、開発仕事の度に出来なくて悩むところ。
今は根性論でチームにハッパかけて仕事やらせてる部分があるけど、こういう所に力入れるのがリーダーの役目なんだろうなと痛感。

効率を追いかけるなら、"What is race"で考える。
車が速ければいい、ドライバが速ければいいというのは"How to race"。バクチ。
レースはサーキットでやるものではなく、ホームワークでやるもの。だから全戦全勝できる。

プログラマ的には「どう作るか?」ではなく「何を作るのか?」。これは本当に大事。
最近の仕事で「設計書通りに作りました。どう使うのかは知らないので誰かに決めてもらって下さい」と言われて衝撃を受けたことを思い出した。。

トライ&エラーなんてやってはいけない。特に車はエラーがあると人が死ぬ。予測してOKな事しかやってはいけない。
ただし、「予測してOK」な事を求めると過去の例に戻ってしまう。これをやると商品が時代遅れに戻ってしまう。未来の目標をどう共有させるかが、チームの最高の仕事。

ソフトなのでとりあえず作って動かしてみて、はよくやる。ここはソフトと車の違いかな、と思った。
しかし、予測OKなもので、しかも新しいもの、ってハードルが高い。

不景気というのは、お金持ちがお金の使い道に困って、たっぷり蓄えていて、普通の人にお金がいかなくなった状態。
ちょっとつつけばお金持ちからお金は出てくる。
不景気だから会社が儲からないのではなく、新聞の記事を読んで経営して会社を儲からなくしてるのが経営者。

リーマン・ショック後、NYでは高い価値を持つもの(金、絵画、アパートメント等)の値段は上がった。BMW、ベンツ、ポルシェの高級車も飛ぶ様に売れた。日本は高級車として売れる車がなく、東南アジアに行って安車を売るという戦略を取ってしまった。

「不景気だから安くしなきゃダメなんだ」と考えてたけど、こういう視点もあるんだな。

GT-Rスーパーカーに見えるか? むしろセダンに見えるでしょ?
でも、スーパーカーに見えない車がスーパーカー抜いていったら相手は度肝抜かれる。普通の人が不可能と思ってることをやるのが日本人。トランクに荷物が積める。退職したおっさんが片手ハンドルで300km出せる。4輪駆動で雨の日も雪の日も走れる。300km走行中にバーストしても普通に走ってディーラーにタイヤ交換行ける。こういう車を作れるのが日本人。日本人のおもてなしの心。
これが日本人がスーパーカーを作って世に問う意味。フェラーリより良いフェラーリを作ったってしょうがない。そこには創造性がない。

以前にフランスに留学してた人から、向こうで不便な所をちょっと工夫するだけでみんなから驚かれたという話を聞いたことを思い出した。この「便利さ」を自然と追求出来るのは日本人の強みなんだろうなと思った。

技術の進化は値段を下げる。技術の進化は付加価値を上げるとみんな思っているが、それは勘違い。

これは実感として分かる。何でも最初に出た時が一番高くて、後は下がってくだけだし。
とは言っても、進化していかないと、買ってすらもらえなくなる。。

原価を下げる方法として、2つの道がある。技術の進化で原価と小型化を行うことで原価を下げるか、技術開発を止めて安い所を使って賃金格差で原価を下げるか。
技術開発を止めると、低いレベルに合わせた技術と作りになる。今まで誤差±0.3で作ってたものを、誤差±0.5で作ってもOKと言ったりする。これを100箇所集めたら車はどうなる? これを日本の会社の商品として売ることは長い目で見ていってどうなのか?

安い車で海外展開を行ったメーカーは3月決算でほとんど利益出ていない。
日本のものづくりにこだわった自動車メーカーは利益が出ている。特にTOYOTAは震災後、岩手にAQUAの工場を作って、震災復興と日本の技術の復興の両方を行った。こういう事をやると従業員もやる気が出る。

ソフト開発も全く同じ道を歩んでるのでよく分かる。

なぜものが見えなくなるか?それは会社という枠の中でモノを見ているから。ニュートラルに見れなくなるから。
野生の動物を檻の中に入れると、最初は野生に戻ろうと暴れるが、1周間もすると暴れるのを止める。居心地が良くなってしまうから。
みんな最初は社会的使命で職業を選んだはず。そのときはフィルターはなかったので社会が見えてた。会社に入ると居心地が良くなり最初の使命を忘れてしまう。情報が見えなくしてるのは自分自信。
会社は実現の手段であり人生に取ってHow Toでしかなく、職業の選択がWhat、Whyだったはず。
会社に入って居心地が良いと、How Toだったはずの会社がWhat、Whyに変わってしまう。これで商品開発やっても客は永遠に見えない。

これは耳が痛いです。。。

物事の開発の上流はプログラマーや設計ではない。
一番えらいのは現場。現場が作れない設計を出しても認められない。現場が作れるもの以外、図面は書いてはいけない。現場が最上流。
現場の技術開発と設計の開発がパラで動くのが日本のものづくりのはず。
今の日本は、設計が言ったから、設計が言ったから、設計が言ったから...
日本人の良さは、新しい精度や技術に挑戦する現場のものづくりと、その現場の腕を活かそうとする設計が組み合わさったものが本来の日本のものづくり。ここにはトライ&エラーという無駄なものはない。

現場の技術を疎かにしたメーカーは今後、永遠にディスカウント合戦とクレーム対応から逃れられなくなる。
なぜなら、設計者は現場の技術以上の図面が描けないから。

「現場の技術を疎かにしたメーカーは今後、永遠にディスカウント合戦とクレーム対応から逃れられなくなる。」は刺さった。
オフショア開発の品質が..というのははよく聞く話だし、オフショアでなくても、安くするために単金の安い協力会社に発注してそれなりのものを作るというのもよくある話。
あと、個人的には、モノを作らない設計者が、現場の技術に着いて行けなくなってるのも怖かったりする。

本当のグローバルはその先にある。
今は日本人が日本の価値観でブランド作ってるが、価値観や概念まで含めて多様化していったとき、日本人の想像力は世界的にもっと力を持てるはず。
エアバスは、デザインはフランス人、質実剛健な構造はドイツ人、質感の高い所はイギリス人がやってる。民族が結集して、それぞれの良さをアセンブリしている。海外化とはこういう事だと思う。

互いの強さを合わせながら新しいものを作り出す。そういう開発やってみたい。

未来は言葉にならない。未来や夢は画像で考えてるはず。未来は言葉では表現できない。
言葉はコミュニケーションツールであって、過去の表現にしかならない。
新しい事をやるときに討論してはいけない。まず一人で考えること。
考えた結果を言葉や画像で見せて、チームでイメージを共有する。
GT-Rを作ったときは「リタイヤした夫婦2人が1週間分の荷物をトランクに詰めて、、ドイツのアウトバーンを走って、、、『こんな時代が来るなんて』と会話してる」こういう車を作ろうぜ、と言った。
「最高速何kmで、ベンチマーク幾つで、、」のような画像にできないものでは目標にならない。

これはなるほどなー、と思った。
最近「これからどうするか?」という討論をやった時に、討論を詰めていっても、現状の問題の反転としての未来(今こういう問題があるから、こう改善されてればいい)しか出てこなかった事を思い出した。

リーダーになって、チーム員と本当に仕事したかったら、会社からもらった権限を忘れること。
今からやる事はかつて世界中で誰もやったことがない仕事なんだ、この人たちは必ず失敗するんだ、失敗を最大限リカバー出来るようにに自分はどんな責任の範囲を貰えばよいか、それだけを考える。

自分はまだここまで腹くくってリーダー出来てないです。確かにこういうリーダーの下だったらみんな全力で作業するよな。

趣味で仕事するからチームがバラバラになる。趣味というのは自分のため。これを「自分らしさ」と勘違いしてる。
「人の喜び」というキーワードがあって、チームで物事が共有できる。
「自分は何やろうか?」と考えてもアイデアは出てこないが、「人のために何をやろうか?」と考えるとアイデアは無限に出てくる。
キーワードは「人の喜び」。「どういうお客さんをどう喜ばせるか」に徹底的に時間を掛けて、具体的な支援に落としこむ。How Toは一番最後に考える。

これは納得。アジャイル開発にも通じる話。

アジャイル開発に通じる話もあったけど、それ以上に、水野さんの仕事への情熱に当てられた2時間でした。水野さん熱かったなー。

公演中に度々紹介されてたスライド。

『時を超える技術』 水野和敏氏 ―あなたと部下を最高の結果に導く極意とは?― - YouTube

午後の部に続く。